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韓国の風土


 住職 干坂げんぽう

 インチョン (仁川)空港からソウル市内のホテルに向かうタクシーの窓から、妻と訪韓した昨年同様の景色が流れる。


東国大学の林の調査
 北東アジアのハブ(拠点)空港にしようということで、国を挙げて整備しているだけに空港、接続道路の広さは日本の比ではない。国の意気込みを物語るように、道路協は至る所工事中で、発展のエネルギーを感じる。

 しかし、自然地形をいじっているのに、仙台空港付近の道路とは色彩感が違う。今回の同行者、千葉喜彦ランドシャフト研究所長と仙台空港付近のセイタカアワダチソウの多さを話題にしてきたので、どうしてもその方面に関心が趣く。

 韓国では、日本に比べて明らかに草本類が少ない。日本の道ばたでは、セイヨウタンポポ、オオイヌノフグリ、ハルジオン、オ二ノゲシ、ヒメジオン、ブタクサ、オオブタクサ、クローバー類、セイタカアワダチソウと外来植物が草本類の多数派となり、エゾタンポポ、ウツボクサ、ツリガネニンジン、サワヒヨドリなどの在来種が追いやられ、見るも無惨な景観になっているが、そのような知識がなければ、道路際でも緑豊かな大地と感じる。

 韓国ではむき出しの土が至る所に見られるので、日本の常識から言うと、このような所にはセイタカアワダチソウの群落となっているはずだ。大規模な護岸工事を行った北上川の下流地帯はその代表的な例である。ところが、窓外を注意深く見ているのだが、いつまで経ってもセイタカアワダチソウが現れてこない。

 干葉喜彦氏は、どのような樹木があるか目をこらしているが、日本に無い種類は見あたらないとのこと。やはり、仙台、一関とほぼ同じ緯度に位置するので、植生も似てくるのだろうと言うことになった。それだけにセイタカアワダチソウが無い事は不思議であった。

 小一時間してソウル市内に入る。昨年の訪韓時は夏の終わりであったが、今回は十一月、紅葉の季節である。イチョウが黄色く色づき、ソウル市の並木のほとんどがイチョウであることに気付かされる。単一種の植樹は生態系の多様性重視の立場では好ましくはない。そのような思いに駆られている時、干葉所長が言った。「イチョウが変ではないか?」

調査する千葉喜彦氏

 確かに日本のイチョウのようにどの木もスックと立っていない。強い北風などのせいで一方に傾いているというのではない。気をつけて見ないと見過ごしてしまう程度であるが、極端に言うと「クネクネ」したように、一メートル内外の単位で曲がっている。

 元来、汚染などに強い街路樹として選ばれたイチョウさえ伸びが悪いということは、土質が悪く、雨量も少ないのだろうという二人の共通認識となった。あの強靭な生命力を日本で見せつけるセイタカアワダチソウが無いという原因も、この厳しい土質条件と少ない雨量とが関係しているのであろう。韓国の街路樹に多様性という概念を持ち出すのは無理があると納得したのである。どこに行ってもイチョウだらけという徹底ぶりは、緑の国上づくりにかける韓国行政府の情熱の発露と捉えるべきなのであろう。

 そう思うと、,高速道路沿いの二次林整備の素晴らしさ、チョンゲチョン(清浜渓川)の復活など、自然を取り戻すために行っている韓国の政策が良く見えてくる。これも樹木葬というテーマで韓国を見つめたお陰であろうか。




樹木葬通信 2006年1月1日発行 VOL.29より




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