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日々是好日(にちにちこれこうにち)


 住職 干坂げんぽう

  お正月を迎え、気持ちを新たにする好時節となる。忘れかけていた干支が意識されるのもこの時期ならである。

 丁亥(テイガイ)の2007年は、火の性質の弟分・丁(ひのと)と水の性質の女の組み合わせである。そこで、昔なら、火(日照)と水(降雨)との強弱云々ということが話題になっていたであろう。長い間、新しい年の稲作が日本人最大の関心事であったから、占いは生活と係わっていた。岩干県花巻市の「タロシノ滝」では、氷柱の太さで、今年の豊作を占う。

 これらの微笑ましい占いと異なり、近頃のテレビ局が重用する占いは問題が多い。占星術、風水などは現代では迷信というべきであるが、古来から蓄積した技術を利用すれば、人生相談を有効に行う一助になることは否めない。


悠分庵上空を飛ぶ白鳥
 ところがテレビ局が使う占い者は、「崇り」などの言葉で視聴者を惑わすことが多いと聞く。知勝院の現地説明会、相談会などで、テレビでこう言っていたからと話す人が最近出てきている。「継承制度(嫡男優先)を守らないと悪いことが起きるとテレビで言っていますがどうですか」と相談する人が出てきているのもテレビの影響らしい。

 最近は日本社会が経験したことのない人口減少期に差し掛かってきた。現今は「今までの檀家制度はやがて崩壊する」という見方が、多くの宗教者から出ている。そういう情況の中で、寺側は、如何にしたら信者を獲得できるか努カし、一般人は反対に、寺院との付き合いを出来るだけ避けようとしている。まさに、混沌とした時代と言える。

 このような社会の変動期では、将来が見通せないことからくる不安感が社会に蔓延し、占いや新興宗教などが流行する。特に、明日が分からない人気商売の芸能人は高圧的に預言する人に弱い。高齢者の不安感に同調するように、「脅しに弱い芸能人と高圧的な占い師」の組み合わせによる番組が今日も続く。

 劇場型の小泉政治をもてはやしたテレビは、短いフレーズで人様の将来を断定する占い師をも好む。しかし、私たちは編されてはいけない。占い師たちも自分の明日は分からないのだ。

 生者病死の「四苦」を見据えることが出来るのが人間であるが、四季の循環を楽しむことも人生の妙味である。したがつて、一休禅師に仮託された句のように、正月を「冥土の旅の一里塚」とアナーキーに捉えることもない。まして、「日々是好日」として、一日一日を精一杯生きておれば、テレビに登場する占い師などに左右されないで済むはずだ。

 私は旧暦の正月や二十四節気の立春の方を楽しみにしている。それは寒さからの解放を実感できるからだ。しかし、世を挙げて太陽暦の正月を祝っているなら、何とか体調をキープし、みんなと同調したいものである。「たかが正月、されど正月」と言ったところであろうか。

 寒さが厳しくなる時節なので、皆さんがご健康でありますようご祈念申し上げます。



樹木葬通信 2007年1月1日発行 VOL35より




長倉山 知勝院
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